お世話になっております。インキュベクスの青井です。
ケアーズは、これまで約800社の訪問看護ステーションの開業支援に携わってまいりました。
現在も、新たに開設するステーションの支援や人材のマッチング、オンラインセミナーなど開催し、日々パートナー様からのご相談を受け、サポートを行っております。
本日は、ケアーズが目指す「成長し続ける訪問看護ステーション」をつくるために、パートナー様にどのようなノウハウをお伝えしているか、お話させていただきます。
直営ステーションの取り組みをご紹介します
横浜市鶴見区にある「訪問看護ステーション 鶴見」は、ケアーズ直営の訪問看護ステーションです。
現在、若手の男性理学療法士が主体となり、訪問リハビリに力を入れています。
彼らは日ごろから理学療法士としての仕事以外に、自ら営業プランを提出し、「利用者を増やすために、いま自分は何をすべきか」を考え、営業活動にも力を入れています。
常に目標達成意識を持ち、主体的に行動しているのです。
主な営業先は、ケアマネージャー事務所や病院です。訪問リハビリの合間に効率よく営業にまわれるよう、スタッフ間で担当エリアを分担。月に200軒のケアマネージャー事務所や病院を回ることで、新規のご利用者様がどれくらい増えるかといった概算を出し、営業エリアを調整しています。
このような営業は、施設の管理者が行うだけではなく、むしろ現場にいるスタッフ自らが動いて、ケアマネージャーとの信頼関係を築くためにも必要で、大切なことです。
彼らは、自分たちが作成した営業プランに基づき主体的に営業活動を行い、計画がきちんと実行されているか確認や見直しをするミーティングもしています。
「営業して反応の良かった先をピックアップする」「優先度別に営業リストの改変」など、自分たちが動いて見えてきたこと、自分たちが積み上げてきた経験、成功も失敗も共有することで、「成功の法則」を自ら導き出すのです。
こうして「主体的な営業組織」が出来上がり、新規開拓の訪問先を増やす結果に結びついています。
現場スタッフが主体的に動ける組織づくり
このように、訪問看護ステーション事業においては経営者や管理者だけでなく、実際に訪問を行う看護師さんや療法士さんが、ご利用者様の紹介先であるケアマネージャー事務所、介護施設、病院などに営業(ご挨拶まわり)を行うことがとても大切です。
現場にいるスタッフは、日々、様々なご利用者様と接しています。現場の現状やニーズもつかみやすく、その経験や実績が営業活動にも反映されます。
スタッフ自身の人柄、得意分野などをケアマネージャーに知ってもらうコミュニケーションも、営業の結果につながります。
こうして成果が表れることによって、スタッフのモチベーションが上がります。
たとえ有能な運営者であっても、過去の成功体験をもとに決めた方針が現状にそぐわないことも頻繁に起きています。
その点からも、現場の声を知るスタッフが営業活動の主体となることが有効です。
運営者は、資金繰りや人材のマネジメントといった、ステーション経営全般においての責任がありますが、現場スタッフが働きやすい環境をつくることも重要な仕事と言えるでしょう。
主体的に動くために、スタッフの意欲を引き出す
では、現場スタッフが主体的に動く組織にするにはどうしたらいいか・・・この組織づくりは、ケアーズが重要視していることでもあります。
「主体的に動く」ためには、まずスタッフの「意欲を引き出す」ことです。
「もっと利用者さんを増やしたい」
「もっと利用者さんの役に立ちたい」
「もっと自分のスキルを上げたい」
「地域の人たちに知ってほしい」
「収入を増やしたい」
スタッフそれぞれが考える、理想やなりたい自分、叶えたい目標を引き出すには、日ごろから会話を重ね、相手が何を望んでいるか知る。
そうしたコミュニケーションが必要でしょう。
相手の思いを知り、受け止めること。そして、その思いを叶えるにはどうしたらいいかという道筋を、管理者も含めてスタッフ同士が一緒に考えること。
自分だけで考えているときには「難しい」と思っていたことが、違う角度からの視点や他の人の協力を得ることで、打開策が見つかることもあります。
「できない」から「できる」「やってみよう」と「意識が変わる」ことで、結果も変わってきます。
管理者の立場にある人は指揮命令するのではなく、現場スタッフたちが自ら考える流れをつくり、その意見に耳を傾け、否定することなく、いったん受け止めること。
そうやって一人ひとりを尊重することで、引き出した意欲を削ぐことなく、主体性を育むことこそが、管理者としてのマネジメント力です。
管理者の立場となる方には、ぜひその重要性をお伝えしたいと思っています。
人は、自分の「こうしたい」という意欲、思いが尊重され、仕事を任されることで主体性や責任感が芽生え、結果的に意識が変わっていくのです。
注目が集まるオランダ発の在宅介護組織
介護の先進国オランダには、「ビュートゾルフ」という在宅ケア組織があります。
ビュートゾルフでは、10~12名の看護師が、約50人の利用者を担当。チームごとに看護プランを策定し、協力する医師や薬局の選定など重要な判断を行います。
各チームに上司にあたる管理者は置かず、上からの指示に従うのではなく、自分たちで決めたプランに沿ってケアを行うのが特徴です。
また、看護師の採用や教育、業務管理もチームごとに行い、スタッフの責任やモチベーションが高まることで主体性が芽生えます。
自分たちが主体となって動くことは、責任を持つことでもあります。
この「責任を与えられる」ことで、「意識が変わる」のです。
ビュートゾルフは約7年間で看護師の数は10名から7000名に増え、それを支えるバックオフィスのスタッフは30名ほど。
それでも利用者、働く看護師・介護士らの満足度は高く、従来の介護組織に比べて働くスタッフの欠勤率が60%、離職率が33%低いとされています。
オランダ発の在宅看護モデルとして、ビュートゾルフは世界各国で注目され始めています。
在宅介護や看護が増えるとされる日本でも、このスタイルから学び、取り入れることが多いでしょう。
ケアーズが目指す「主体的営業組織」
ステーション事業運営は、ご利用者様の満足が大前提です。その上で、「安定的に売り上げが拡大する」=「成長し続ける」ことが必要で、その仕組みをつくるためにケアーズでは、これまで述べてきたように現場スタッフの「主体的な営業組織」を重視します。
ステーション運営者・管理者の中に、「利用者様に寄り添うのはもちろん、働く人にとっても働きやすい場所でありたい」と話す方がいます。
これは、本当に重要なことだと思います。
スタッフが尊重され、頑張りが報われる、そんなステーションこそが主体性を育み、つねに成長し続けるのです。
経営者に求められるのは、働きやすい仕組みをつくり、人を育てる力です。
ケアーズが支援を行い、訪問看護ステーションを開業されるパートナー様は、必ずしも介護や医療関係者とは限らず、異業種の民間企業様の参入も珍しくありません。
しかし、人材のマネジメントはステーション事業に限らず、どこの企業でも重要です。人材を活かすノウハウを持つ企業は、異業種からのステーション事業参入であっても、強みを持っているといえます。
最大の成果を出すために、訪問看護ステーションという「チーム」の一人ひとりが主体性を持つこと。強みを発揮すること。
そのためにも管理者は、スタッフ一人ひとりが「当事者」として考え、行動するためのサポート、マネジメントをすることが重要なのです。