お世話になっております。インキュベクスの青井です。
本日は、昨日開催した訪問看護ステーションの経営者をお招きしたオンライン座談会の模様をお送りいたします。
昨日の座談会では、ケアーズの開業支援を利用され、訪問看護ステーションを開業されて今年で4年目になる、ケアーズ日の出訪問看護ステーションの細谷雄祐様をお招きしてお話を伺いました。
細谷様は経営者・管理者・訪問看護師と、一人で3役をこなしながら、事業を拡大されています。
看護師としての目線を持ちながら、どのようにステーションをまとめてきたのか、そして今後の展望は…訪問看護事業にご興味のある方は、是非お読みください。
細谷様、本日は、よろしくお願いします。
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よろしくお願いします。
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細谷様は2017年に日の出訪問看護ステーションを開業され、当初はスタッフ3名からのスタート、それが1年半で看護師8名、PT2名、事務スタッフ2名となりましたね。現在スタッフは何名いらっしゃいますか?
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はい。看護師が15名、PTが非常勤を合わせて12名、事務が5名です。
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順調に成長されていますね。スタッフの数もですが、利用者様の人数もかなり増えてきたのではないですか。
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そうですね。ご利用者様は現在、稼働している件数が230件です。毎月増えていて、全体の件数でいうと1500件くらいになります。
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細谷様ご自身は、今は管理者としての業務に集中されているのでしょうか。
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いいえ、以前と変わっていないですね。訪問看護の現場での業務と管理業務、どちらも行っています。目が行き届かない部分は副管理者を2名つけて、分担して管理業務を行っています。
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以前の事務所が手狭となって、新しいところへ移られたそうですね。
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はい。人も増えて前のところに入りきらなくなって、移転しました。
新しいところは周りがサ高住なんです。そこのオーナーさんから「敷地内に訪問看護ステーションを建ててくれないか」というお話がありまして。
サ高住に訪問看護に行くと減算にはなってしまいますが、利便性は高いです。
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大切なのはステーションやスタッフのカラーを効果的に伝えること
経営はすっかり軌道に乗っていますが、最初の頃の営業は大変ではなかったですか。
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そうですね。ケアマネージャーさん、地域の病院やクリニックへの挨拶まわりが基本だと思いますが、デイサービスなど集団で人がいるところ、サービス付き高齢者住宅、グループホームなど施設系のところに行くと、口コミが広がりやすい印象です。
「こういうステーションで、介護保険が使えて、こういう人たちが利用しています」というのを伝えてきました。
今はコロナの影響でケアマネージャーさんも人に会うのを控えている方も多いので、少ない回数で事業所の特色をわかってもらうために、配るチラシも工夫をして「こういうスタッフがいて、○○大学病院の循環器科でオペにも携わっていた」といったスタッフカラーがわかりやすい内容だと、受けがいいです。
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やはりコロナの影響は出ていますか。
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利用者様たちは、見えない不安をいだいていますね。僕たちも「国の感染予防施策に基づいて、事業所の感染予防をしています」というのを明示したり、訪問に行った先で手洗いをお借りしたり、消毒を徹底して不安感を払しょくできるよう、工夫をしています。
ただ、経営的にはむしろ伸びています。集団で活動するデイサービスは「行きたいけれど休む」という通い控えが多いですが、家にいると身体機能が低下します。
そこで、「看護師さんやリハビリに来てもらいたい」という方が増えています。特定の人間が関わることで感染リスクを下げ、健康を維持する、という考えが皆さんあるようで、仕事はどんどん入ってきている状態です。
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では、今は営業に行かなくてもいいくらいですか。
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はい。申し訳ないけれどお断りするくらいの状態です。対応できるよう、スタッフも増やしていく予定です。
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利用者様の希望を受け、障がい者グループホームを立ち上げ
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さらに現在、障がい者グループホームの開業に向けて準備をされているそうですが、もともと障がい者施設でのボランティアの経験もあるそうですね。
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はい。今訪問看護ステーションがある日の出町に、「日の出武家屋敷」というのがあり、昔ながらの建物で忍者体験などもできる観光施設なんですが、ボランティアセンターでもあり、障がいのある人たちも働いています。そこでボランティアをしてこの地域が好きになり、訪問看護ステーションもそこで開業したんです。
今回障がい者グループホームを立ち上げようと思ったのは、利用者様から望む声が多かったからです。訪問看護で、障がいを持つ子どもを親が介護しているお宅をまわっていて、親が高齢になって子どもの介護が難しくなっているのを目にします。
でも障がい者を受け入れる場所がなく、親としては自分の子の将来がすごく心配ですよね。看護師が運営するグループホームなら医療的ケアにも対応できるということで、「障がい者のグループホームをやってほしい」「やってないんですか」という声が多いことが、立ち上げのきっかけです。
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規模はどれくらいですか。
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小さいところから始めようと思い、定員は4名です。その規模で近くに増やしていければと思っています。
行政からも「看護師が運営する施設なら」と、後押ししていただいています。
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現場を知る看護師がステーション経営を行うメリット
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訪問介護ステーションを開業して4年目となりますが、事業を拡大して人が増えていくと、管理者としての責任も大きくなりますね。
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スタッフを少しずつ増やしていくにあたり、働き方の希望が個々で違っているところをつなぎ合わせ、ひとつの輪でみんなで業務を行っていくのですが、そこを統括していくのが一番難しいです。
みんなの希望を全部は叶えられなくても、少しずつ実現できるようにしたいですね。
働きやすい職場だと良いケアをしていけると思っています。スタッフのケアを大切にするというのは、重要なポイントですね。
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開業当初は社長自ら朝礼を行い、まかないも作る、というお話でしたね。
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まかないは、さすがにこの人数だと給食センターみたいになってしまうので(笑)、ときどき残業しているスタッフに作ったりはしています。
でも、こんなご時世なので、違う形で福利厚生は充実させていきたいと思っています。
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現在は何かされていますか。
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スタッフが希望する研修を募って、毎月予算を使えるようにしています。各自がどんな研修を受けたいか、勉強したいことを募り、研修を受けた人がその内容を他のスタッフに伝達講習していけるようにしています。
講師をした人には手当を出し、知識も定着するので、自己啓発の意味もあります。
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細谷様は看護師であり、同時に管理者、経営者でもありますが、看護師自らが訪問看護ステーションを経営するメリットはありますか。
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看護師をとりまとめるのは、同業者の目線でないと難しいときもあると思います。もちろん異業種から入った人でうまくまとめられる人もいますが、看護師さんが強かったりすると、管理者との考え方の相違が起こることもあります。
看護師が経営者、管理者であれば、現場で働く人の目線にも降りていける。経営のことも絡めて指揮系統をとれるようになれば、看護師が経営管理までやるメリットは大きいです。
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スタッフの看護師に対して、気を付けていることはありますか。
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困っているケースについて、一人で抱え込まないようにすることですね。
一人で悩んで抱えて、というのが続くと、解決策も見出せないまましんどくなるので、多くの人数で関わっていくようにするのが大事だと思います。
うちは事務スタッフも現場に行き、利用者様の情報を共有します。医療者ではないからできる気配りというのがあって、違う視点を教えられるきっかけにもなります。
看護資格のあるなしではなく、人として利用者様にどうかかわるか、というところが大切で、いろんな目線があったほうがいいんじゃないかと思い、開業時からずっと、事務スタッフにも現場に出てもらっています。
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ケアーズ日の出の強みはどんなところですか。
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いろんな年齢層、疾患を持っている方でも対応できるようにしているところでしょうか。多種多様なスタッフに来ていただいて、「できない」をつくらないようにしています。
小児、精神疾患のある方、障害のある方、看取りなど、幅広く対応できるよう、“困難事例からやっていく”じゃないですが、“断らないしくみ”をつくることを心がけています。
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今、訪問看護という働き方が注目されている
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開業をする際、弊社のような開業支援の企業を利用するメリットはなんでしょうか。
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お恥ずかしい話ですが、最初は訪問看護のノウハウ、細かい手続きや制度のことなど、よく知りませんでした。利用者さんのところに行くと、「こういう制度が使えますか」とか「訪問看護でこういうケアをしてもらえるのか」など、質問を受けます。
そういうとき、最初の頃は即答できず、インキュベクスさんに確認してから答え、おかげで利用者様にも安心して利用してもらえたという経験がたくさんありました。助けてもらった、という印象がありますね。
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「独立して訪問看護ステーションをやってみたい」という看護師が、今、かなり増えています。ただ、“あと一歩が踏み出せない”という人も多いです。
そういう方たちにアドバイスはありますか。
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自分も病院を辞めるときはすごく悩みました。家族にも反対されましたし、最初は迷惑かけるだろうな、とも思いました。
僕の場合は看護学校時代の同級生で、ステーション開業に協力してくれる仲間がいたのが大きかったです。
病院にいれば安定した収入を得られるというのはあるかもしれませんが、今は先が見えない世の中ですよね。
何が正解で何が成功か失敗かと考えるとき、自分が後悔しないように自分で選んでいくしかないと思います。
確実性があるだろうと思う道を、自分で信じていくしかない。サポートしてくれる人の力を借りながらやってみて、成功の方法を得ていくのがいいのではないでしょうか。
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スタッフの採用や営業は大変ではなかったですか。
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採用は、自分の知り合いのツテで、同級生や前の職場の知り合いに声をかけ、働けそうな人を募りました。
あとは、地域のフリーペーパーのような紙媒体や自分たちで作った求人のチラシが、地域の埋もれている看護師を引き出すのに効果的だったと思います。近場で働ける人は意外と潜んでいて、チラシを見て来てくれた人もいました。
病院から転職したい人も多い中、今は人が集まりやすいと思います。パートとして働きたい人を上手に組み合わせいけば、コスト的にも良いと思います。
営業は地域の病院やクリニックにご挨拶に行き、仕事につながりました。看護師と主治医が話ができるというのは、大きなメリットです。“知っている人に仕事をふりたい”というのは人の情だと思うので、クリニックにちょこちょこ顔を出すのは良いと思います。
あとは、最近は近隣の訪問看護ステーションと協力し合い、「うちの受け皿がいっぱいだから受けてほしい」という話も多いです。
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訪問看護は利用者様が主体。頭を切り替え、柔軟な対応が必要
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病院勤務から訪問看護というのは、働き方もずいぶん変わりますか。
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長年、病院で勤めてこられた方にとって、在宅看護は特殊な部分もあると思います。病院では医療者主体だった治療から、在宅では利用者様主体のケアができるよう頭を切り替える必要はあります。
毎日同じ業務があるわけではないので、突発的なことが起きたりイレギュラーなことに対して柔軟に対応できる人材が求められているのではないでしょうか。
もちろん医療経験は重要ですが、描いたことのない状況のところに行くときもあるので、発想力があって柔軟性がある人が良いと思います。
今、病院勤めから方向性を変えていきたいという医療従事者が多い中で、在宅に視点が集まってきているところだと思います。
未知の世界に飛び込むのは、待遇面や業務の不安もあると思うので、一度体験にきてもらったり、勉強会に参加してもらうのもいいかと思います。
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訪問看護師、管理者、経営者すべてを担う細谷様だからこそ語れる、貴重なお話をたくさんうかがうことができました。
どうもありがとうございました。